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健康保険の対象にならない費用一覧|適用外の治療を受けるときの注意点を紹介


健康保険に加入していれば、どこまでの費用がカバーされるのか疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。

病気やけがで医療行為を受けたときは、健康保険によって1~3割の自己負担で済みます。

なかには、差額ベッド代のように保険適用外となる費用があるので、どのような費用が対象外となるのかを知っておくことが大切です。

そこで今回は、健康保険の適用外となる費用を紹介します。

健康保険のみで医療費をまかなえるのか心配な方や、民間の医療保険に加入すべきか悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

2024-11-20

健康保険が適用されない費用

2024-11-20

日本では、国民全員が健康保険や国民健康保険といった公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されています。

公的医療保険に加入していれば、病気やけがで診察・投薬などの医療行為を受けるときの自己負担が医療費の1~3割となります。

しかし、以下のような費用は原則として、健康保険が適用されません。

  • 先進医療にかかる費用
  • 入院時の食事代の一部や差額ベッド代
  • 健康診断や人間ドックなどの費用
  • 正常な妊娠・分娩の定期健診や出産費用
  • 予防注射の費用
  • 負傷日時が明らかでない痛みに対する整骨院・接骨院での施術費
  • 美容を目的とする治療・手術費
  • 歯列矯正費
  • 業務上の病気やけがの治療費

それぞれ詳しく紹介します。

先進医療にかかる費用

先進医療とは、公的医療保険の対象にするのかを評価する段階にある治療や手術のことです。

令和6年10月1日時点の先進医療は、76種類あります。

先進医療にかかる費用は全額負担することとなり、医療の種類や病院によって異なります。

なお、先進医療に直接かかる費用以外の診察や検査、入院料などの通常治療と共通する部分の費用については保険が適用されるケースがほとんどです。

入院時の食事代の一部や差額ベッド代

入院時にかかる治療費や入院基本料は原則1〜3割の自己負担となりますが、食事代の一部や差額ベッド代は保険適外となり、全額自己負担となります。

  • 差額ベッド代
  • 食事代の一部
  • 先進医療にかかる費用
  • 病院の往復にかかる交通費
  • 入院中に購入した着替えや入浴グッズなどの消耗品費

差額ベッド代とは、自ら希望して個室や少人数部屋で入院するときに支払う費用のことです。

厚生労働省の調査では、1日あたりの差額ベッド代の相場が以下のように公表されています(令和4年7月1日時点)。

1人室 8,322円
2人室 3,101円
3人室 2,826円
4人室 2,705円

参考:厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況

入院時の食費代は原則として、1食につき490円(令和6年5月31日以前は460円)の自己負担が必要となります。

健康診断や人間ドックなどの費用

健康診断や人間ドック、集団検診は原則として、保険適用外となります。

ただし、健康診断や人間ドックで異常が見つかったときの再検査・治療にかかる費用は保険適用となります。

なお、加入している健康保険組合や会社、自治体によっては、健康診断や人間ドックにかかる費用の一部を補助してもらえる場合があるので、事前にホームページなどで確認しておきましょう。

正常な妊娠・分娩の定期健診や出産費用

妊婦の定期検査や正常分娩の費用は保険適用外となります。

ただし、帝王切開による入院・手術といった一部のケースでは保険が適用されます。

なお、定期検査は1回あたり5,000円~2万円ほどかかりますが、助成制度を設けている自治体がほとんどです。

一方、正常分娩における出産費用は、40万~50万円が相場です。

保険適用にはならないものの、健康保険の被保険者や扶養者、国民健康保険の被保険者が出産したときは、50万円の出産育児一時金が受け取れます。

加えて、会社員や公務員などの健康保険加入者であれば、出産のために会社を休み、その間の給与が支払われていない場合は出産手当金が支給されます。

予防注射の費用

予防注射にかかる費用は原則として保険適用外となり、全額自己負担しなければいけません。

なかには、予防接種費の一部を助成してくれる健康保険組合や自治体もあるので、ホームページでチェックしてみましょう。

予防接種の副反応による健康被害が起こったときは、予防接種健康被害救済制度によって、自治体から医療費の給付などを受けられる可能性があります。

負傷日時が明らかでない痛みに対する整骨院・接骨院での施術費

負傷日時が明らかでない痛みの治療を目的に、整骨院・接骨院で施術を受けた場合、保険適用外となります。

例えば、以下のようなケースでは保険が適用されません。

  • 日常生活の疲労による肩こりや腰痛
  • スポーツによる筋肉疲労や筋肉痛
  • 神経痛やヘルニアなどの痛み
  • 過去のけがや交通事故の後遺症による痛み など

一方で、ねんざや打撲、肉離れなどの治療、医師の同意のもとで実施する骨折や脱臼の施術は、基本的に保険対象となります。

美容を目的とする治療・手術費

目を二重にする手術や、シミの治療といった美容を目的とする治療・手術費は基本的に保険が適用されません。

ただし、まぶたを持ち上げる筋肉の機能障害によって視野が狭くなっていたり、悪性黒色腫(メラノーマ)の恐れがあるシミやほくろがあったりするときの治療は保険適用される可能性があります。

歯列矯正費

矯正装置を使って歯並びを改善する歯列矯正は、基本的に保険が適用されません。

ただし、あごの骨の異常によって嚙み合わせに問題が出ているといった厚生労働大臣が定めるケースに該当するときは保険の対象となります。

なお、保険対象となる歯列矯正治療を受けられる医療機関は、一定条件を満たしているところに限られるので注意しましょう。

対象となる医療機関は、以下の地方厚生局のホームページからチェックできます。

https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/

業務上の病気やけがの治療費

業務上の病気やけが、通勤中の事故によるけがの治療費は、労災保険の対象となるため、健康保険の適用を受けられません。

該当する場合は、労災病院や労災指定の医療機関などで無償で治療を受けることとなります。

労災指定の医療機関以外で治療を受けた場合は、一度治療費を全額負担し、あとで請求することで負担した費用の全額が支給されます。

業務上の病気やけがに健康保険を使うと、本来支払わなくてもよい治療費を一度負担しなければならないので注意しましょう。

健康保険が適用されないときの注意点

2024-11-20

健康保険が適用されないときは、診療にかかる費用が全額自己負担となったり、高額療養費制度の支給対象とならなかったりします。

ここでは、健康保険の適用外となったときの注意点を紹介します。

診療にかかる費用が全額自己負担となる

原則として、保険適用の診療と適用外の診療の併用は禁止されています。

保険の適用外となる治療を受けた場合は、保険が適用される診療も含めて、医療費の全額が自己負担となってしまうので注意が必要です。

ただし、保険適用外の治療を受けるときでも、厚生労働大臣が定める以下の「評価療養」と「選定療養」に該当するものは併用が認められています。

評価療養 ・先進治療

・医薬品や医療機器の治験にかかる診療

・薬事法承認後で保険収載前の医薬品・医療機器の使用

適用外の医薬品や医療機器の使用

選定療養 ・特別の療養環境(差額ベッド)

・予約診療

・時間外診療

・大病院の初診、再診

・180日を超える入院 など

例えば、総医療費が150万円で先進医療にかかる費用が50万円だった場合は、50万円を負担することとなります。

高額療養費制度の支給対象とならない

高額療養費制度とは、1ヶ月の間にかかった医療費の自己負担額が高額になったときに、一定の金額を超えた分が払い戻される制度です。

高額療養費制度の対象となるのは、原則として保険適用の医療費です。

そのため、入院時の差額ベッド代や食事代といった保険適用外の費用が高額になっても還付を受けられません。

民間医療保険の加入は健康保険の適用範囲を考慮したうえで検討する

2024-11-20

民間医療保険の加入を検討している人は、健康保険の適用外となる費用を知ったうえで加入すべきかを決めましょう。

日本の公的医療保険では幅広い治療に対応できるだけでなく、高額療養費制度によって医療費の負担も軽減できます。

ただし、公的医療保険では長期入院や先進治療の費用までカバーしきれないことがあります。

長期入院や手術の費用、働けない間の収入をまかなえる十分な貯蓄があるのであれば、民間医療保険の必要性は低いといえるでしょう。

一方で、貯蓄が少ない人や将来的な健康状態に負担を感じる人、治療の選択肢を増やしたい人は加入することをおすすめします。

健康保険でカバーできない範囲を知って適切な方法で備えよう

健康保険では、先進医療の費用や入院時の差額ベッド代といった一部の費用が適用外となっています。

保険適用外の費用のなかでも、妊婦定期検査や健康診断、人間ドックの費用は、自治体などの助成制度で金銭的な負担を軽減できる可能性があります。

そのため、家計や健康状態によっては、健康保険の加入だけで十分な補償を受けられるケースも考えられるでしょう。

万が一のときの出費に対し、適切な方法で備えるためにも、健康保険でカバーできる範囲・カバーできない範囲を押さえておくことが大切です。

民間医療保険に加入するべきか悩んでいる人は、お気軽にご相談ください。

監修者:東本 隼之

AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士

この記事を書いた人:花谷瑛奈
2級ファイナンシャル・プランニング技能士・マネーライター|SEO記事を中心に300記事以上の執筆を担当|得意分野:税金、社会保険、資産運用など|ていねいにリサーチして読みやすく、わかりやすい記事を執筆します。