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マンションを購入する際に、頭金をいくら用意すればよいか悩む方は多いのではないでしょうか。
十分な頭金を用意して住宅ローンの借入額を減らせれば、支払う利息が減ることで返済の負担を軽減できます。
しかし、頭金を増やしすぎると急な出費に対応できなくなるので注意が必要です。
この記事では、マンションを購入する際の頭金の目安や、頭金の金額を決めるときのポイントを解説します。
頭金なしで購入する際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
マンション購入時の頭金の目安は?
頭金とは、物件の購入金額のうち自己資金で支払うお金のことです。
マンション購入時の頭金の目安は、物件価格の10〜20%とされています。
住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査」では、新築マンションと中古マンション購入時の頭金の平均割合は以下のように公表されています。
住宅の種類 | 平均購入金額 | 頭金の平均額 | 頭金の平均割合 |
新築マンション | 5,245.4万円 | 1,188.7万円 | 22.7% |
中古マンション | 3,037.1万円 | 529.9万円 | 17.4% |
頭金を支払うタイミングは、物件の売買契約を締結してから引渡しまでの間です。
なお、マンションの売買契約前に購入の意思を示すための「申込証拠金」や売買契約の成立の証となる「手付金」の支払いが発生する場合がありますが、これらのお金はマンションの購入代金に充当されるのが一般的です。
頭金を用意するメリット
マンションを購入する際に頭金を用意すると、以下のようなメリットがあります。
- 住宅ローン返済の負担を軽減できる
- 住宅ローン金利が優遇される場合がある
- 住宅ローン審査に通りやすくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
住宅ローン返済の負担を軽減できる
金融機関から借り入れたお金には、適用金利に応じた利息がかかります。
十分な頭金を用意して借入額を減らせれば、支払う利息も減るため、毎月の返済額や総返済額を抑えられます。
4,000万円のマンションを購入するときの頭金の金額が変わることで、毎月の返済額と総支払額がどのように変動するのかを比較してみましょう。
【前提条件】
- 物件価格:4,000万円
- 返済期間:35年
- 金利条件:全期間固定金利1.5%
- 返済方式:元利均等返済
- ボーナス払い:なし
頭金の金額 | 借入額 | 毎月の返済額 | 利息 | 総支払額
(頭金+ローン返済額) |
0円 | 4,000万円 | 約12.2万円 | 約1,144万円 | 約5,144 万円 |
100万円 | 3,900万円 | 約12 万円 | 約1,115万円 | 約5,115万円 |
500万円 | 3,500万円 | 約10.7万円 | 約1,000万円 | 約5,000万円 |
1,000万円 | 3,000万円 | 約9.2万円 | 約858万円 | 約4,858万円 |
シミュレーション結果から、頭金なしの総支払額と比べて頭金100万円では29万円、500万円では144万円、1,000万円では286万円減少することがわかります。
また、変動金利の適用金利が上昇した場合に、返済できなくなるリスクも軽減できます。
住宅ローン金利が優遇される場合がある
金融機関によっては、頭金を支払うことで住宅ローン金利が優遇される場合があります。
全期間固定金利の住宅ローンのフラット35では、適用金利が融資率によって以下のように異なります。
融資率 | 金利 | 最も多い適用金利 |
9割以下 | 年1.820%~年3.350% | 年1.820% |
9割超 | 年1.930%~年3.460% | 年1.930% |
※2024年10月時点
頭金を準備することで適用金利が下がれば、住宅ローンの返済負担を軽減できます。
住宅ローン審査に通りやすくなる
住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なり、ローン申込者の年収や滞納履歴などさまざまな項目から判断されることになります。
ある程度まとまった金額の頭金を用意して借入額を下げられれば、年収に対する返済負担率が小さくなることで審査に通りやすくなります。
加えて、頭金を用意できることは、一定の返済能力があることを示す要素になるでしょう。
頭金の有無だけで審査結果が大きく変わることは少ないですが、住宅ローンの審査に通るか不安を抱えている方は十分な頭金を準備しておくことをおすすめします。
頭金の金額を決めるときのポイント
頭金を増やすほど住宅ローン返済の負担を軽減できますが、頭金が多いほどよいというわけではありません。
頭金の金額を決める際は、必要なお金を手元に残し、諸費用を考慮したうえで検討することが大切です。
ここからは、頭金の金額を決めるときのポイントを解説します。
必要なお金を手元に残す
住宅ローン返済の負担を軽減するために頭金を増やしすぎると、急な出費に対応できなくなる可能性があります。
病気やケガで働けなくなったときや失業したときに備えて、生活費の6ヶ月~1年分のお金を手元に残しておくことが大切です。
加えて、教育資金や車の買い換え資金など、住宅ローン借入後のライフイベントで必要となるお金も考慮する必要があります。
マンション購入時に十分な頭金を用意できなくても、家計に余裕ができたタイミングで繰上返済をして総返済額を減らす方法もあります。
頭金を増やすことにこだわりすぎるのではなく、今後のライフイベントや急な出費に備えられるように適切な頭金の金額を決めましょう。
諸費用を考慮する
マンション購入時は、不動産登記費用や住宅ローンの手数料、印紙税、引越し費用などの諸費用がかかります。
諸費用の金額は、新築マンションの場合に購入価格の3〜6%程度、中古マンションの場合に購入価格の6〜10%程度といわれています。
金融機関によっては諸費用分
を住宅ローンに組み込める場合もありますが、毎月の返済負担が増えて家計が圧迫される可能性があるので注意が必要です。
そのような状況を避けるためにも、諸費用分を自己資金でまかなったうえで頭金の金額を決めましょう。
頭金なしで購入する際の注意点
金融機関によっては頭金なしで住宅ローンを組むことができます。
ただし、頭金なしでマンションを購入すると、住宅ローン返済が苦しくなったり、マンションをスムーズに売却できなくなったりする可能性があります。
最後に、頭金なしで購入する際の注意点を見ていきましょう。
住宅ローン返済が苦しくなる可能性がある
頭金なしで住宅ローンを組むと、借入額だけでなく利息額も増えるため、返済の負担が大きくなります。
変動金利で住宅ローンを組んだ際は、適用金利が上昇したときに返済できなくなるリスクが高まるでしょう。
住宅ローンの返済ができなくなると、最終的にマンションを手放すことになってしまいます。
マンション購入時に頭金を用意できないということは、貯蓄が不十分である可能性が高いといえます。
収支や金利に変化があっても無理なく返済を続けるためにも、購入するマンションの条件を見直したり、余裕をもった返済計画を立てたりすることが大切です。
マンションを売却できなくなるリスクがある
住宅ローン返済中のマンションを売却するときは、ローンを完済する必要があります。
住宅ローンの借入額が大きい場合、売却価格が住宅ローン残債を下回ってしまう可能性があります。
売却金だけで完済できなければ、不足分を自己資金で補わなければなりません。
マンションを売却するときに困らないためにも、借入額が高くなる場合は購入するマンションを見直して購入金額を下げることも検討しましょう。
頭金を用意して住宅ローン返済の負担を軽減しよう
マンション購入時の頭金の目安は、物件価格の10〜20%とされています。
頭金を増やすほど住宅ローン返済の負担を軽減できますが、そのほかの出費に対応できなくなる可能性があるので注意が必要です。
頭金の金額を決めるときは、急な出費やライフイベントに備えるためのお金、マンション購入時にかかる諸費用を考慮しましょう。
頭金の金額をいくらにすればよいか悩んでいる方や、住宅ローンの返済計画に不安がある方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士