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持ち家があるにもかかわらず転勤が決まり、持ち家をどうすべきか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
転勤が決まったときの選択肢には、単身赴任を選んだり、持ち家を売却・賃貸に出したりする方法があります。
どの方法にもメリット・デメリットがあるため、家庭の状況に応じて適切なものを選ぶことが大切です。
そこで今回は、転勤が決まった場合の持ち家の対処法を4つ紹介します。
どの方法を選ぶべきか迷ったときの判断基準も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
転勤が決まった場合の持ち家の4つの対処法
転勤が決まった場合の持ち家の対処法には、以下の4つがあります。
- 単身赴任を選んで家族は住み続ける
- 持ち家を空き家として所有する
- 持ち家を売却する
- 持ち家を貸し出す
それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
1.単身赴任を選んで家族は住み続ける
転勤が決まった場合、単身赴任を選んで家族に住み続けてもらう方法があります。
まずは単身赴任を選ぶメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
単身赴任を選ぶメリットは、以下の通りです。
- 家族の生活環境が大きく変わることを防げる
- 住宅ローン控除の適用を継続できる
- 家の管理を家族に任せられる
転勤先に家族全員で引越しをすると、今まで培ってきた人間関係や住み慣れた場所から離れることになります。
パートナーが仕事を辞めたり、子どもが転校したりする必要性も出てくるでしょう。
人間関係や環境に大きな変化が生じると、精神的な負担がかかってしまいます。
一方、単身赴任を選べば、パートナーや子どもの生活環境が大きく変わることを防げるでしょう。
加えて、住宅ローン控除の適用を継続できるメリットもあります。
住宅ローン控除は、本人や家族が居住する家に対して受けられるものです。
家族全員で引越しをすると、控除の適用外となり、節税効果がなくなってしまいます。
単身赴任であれば、家族が住み続けることになるため、住宅ローン控除による節税効果を受け続けられます。
デメリット
単身赴任を選ぶデメリットには、以下のようなものがあります。
- 家族と離れて暮らすことになる
- 経済的負担が大きくなりやすい
単身赴任を選ぶと、家族と離れて暮らすことでの弊害が生じる場合があります。
子どもが小さい場合は、パートナーに子育てを任せることになります。
身近に頼れる人がいなければ、パートナーに大きな負担をかけることになるかもしれません。
また、単身赴任先の家賃と住宅ローンを二重に支払うことで、経済的な負担が大きくなる可能性もあります。
家族のもとに帰る頻度が多ければ、交通費がかかって家計を圧迫することも考えられるでしょう。
2.持ち家を空き家として所有する
転勤が決まった場合、家族全員で引越し、持ち家を空き家として所有する方法があります。
持ち家を売却したり貸し出したりせず、空き家として所有するメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
空き家として所有するメリットは、以下の通りです。
- 好きなタイミングで戻れる
- 荷物を移動する必要がない
- 売却や賃貸に出す手間がかからない
空き家として所有すれば、長期休暇のタイミングで帰宅したり、ライフプランの変化に応じて戻ったりできます。
加えて、家の中のものをすべて引越し先に持っていく必要がないため、家具を処分する必要がありません。
なお、売却や賃貸に出すときは、不動産会社や買主、借主と話し合いをすることとなります。
やり取りの手間がかかるだけでなく、トラブルが起こる心配もあります。
手間やトラブルの心配を少なくしたい場合は、空き家として所有することも視野に入れてみましょう。
デメリット
空き家として所有するデメリットには、以下のようなものがあります。
- 定期的な管理が必要になる
- 固定資産税や火災保険料などのランニングコストがかかる
- 住宅ローンの一括返済を求められる場合がある
- 住宅ローン控除の適用外となる
長期間、誰も住んでいない家は、換気や掃除が行われず、劣化するスピードが早まるといわれています。
そのため、空き家として所有する場合、定期的に戻って掃除をしたり空き家管理代行サービスを利用したりする必要があります。
持ち家を手放すわけではないので、固定資産税や火災保険料などの支払いが続く点にも注意しましょう。
マンションの場合は、管理費や修繕積立費の支払いも継続します。
また、空き家にすると住宅ローンの契約違反となり、一括返済を求められる場合があります。
一定条件のもと、そのまま返済を続けられる場合もあるので、家族全員で転勤先に引越す場合は金融機関に相談してみましょう。
住宅ローン控除は、空き家にすることで適用外となってしまいます。
持ち家を空き家にする際は、税金や維持費、住宅ローン返済といった金銭的な負担を考慮したうえで検討するようにしましょう。
3.持ち家を売却する
転勤が決まったときに家族全員で引越し、持ち家を売却する方法もあります。
持ち家を売却するメリット・デメリットを詳しく紹介します。
メリット
持ち家を売却するメリットは、以下の通りです。
- 管理する手間がかからない
- 固定資産税や火災保険料などの負担がなくなる
- 売却益が出る場合がある
持ち家を売却して手放せば、固定資産税や火災保険料といった維持費の支払いが不要となります。
定期的に掃除をしたり、管理会社に依頼したりする必要もありません。
加えて、売却金額が住宅ローン残債を上回っている場合は、まとまった資金を得られ、転勤先への引越し費用や住宅の買い替え費用に充てられるでしょう。
デメリット
持ち家を売却する主なデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 住み慣れた家を手放すことになる
- 売却までに時間や費用がかかりやすい
- 住宅ローンを完済するための自己資金が必要になる場合がある
持ち家を売却すれば、住み慣れた家を手放すことになり、再び住むことができなくなります。
加えて、不動産会社に仲介業務を依頼すると、仲介手数料がかかります。
売却活動をしても、家の状態や立地条件によっては、買主が見つからない可能性も考えられるでしょう。
なお、住宅ローンの残債がある住宅は、抵当権を抹消をしたうえで売却するのが通例です。
抵当権を抹消するには、住宅ローンを完済しなければなりません。
売却金額が残債を下回っている場合は、自己資金で返済しなければならないので、家計を圧迫する恐れもあります。
4.持ち家を貸し出す
転勤が決まったときは、家族全員で引越し、持ち家を一時的に貸し出すのも手段の一つです。
持ち家を貸し出すメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
持ち家を貸し出すメリットは、以下の通りです。
- 戻ってきたときに再び持ち家に住める
- 家賃収入が得られる
- 換気や掃除の手間がかからない
転勤先から戻ってくるタイミングがわかる場合は、再び持ち家に住めるように期間限定で貸し出すのがおすすめです。
持ち家を貸し出せば、家賃収入で固定資産税などの維持費をまかなえる可能性もあります。
また、誰かに住んでもらうことで、定期的な換気や掃除をする必要がなくなるでしょう。
デメリット
持ち家を貸し出すデメリットには、以下のようなものがあります。
- 固定資産税や火災保険料などのランニングコストがかかる
- 退去後にクリーニングやリフォーム費用が発生する
- 住宅ローンの契約違反になる可能性がある
空き家として所有する方法と同じく、自分が所有者であることには変わりないため、固定資産税などの維持費がかかります。
安定した家賃収入を得るには、クリーニングやリフォームが必須といえるでしょう。
また、住宅ローンは居住用住宅を購入するためのローンであるため、賃貸に出すと契約違反に該当し、一括返済を求められる可能性があります。
転勤といったやむを得ないケースでは、そのまま返済を続けられることもあるので、事前に金融機関に相談しましょう。
転勤時の持ち家の対処法を決めるときの基準
転勤時の持ち家の対処法を決めるときは、事前に以下について確認しておくことが大切です。
- 家族の意向や状況
- 転勤の期間
- 転勤先の住宅補助や社宅の有無
一つずつ詳しく解説します。
家族の意向や状況
単身赴任をすべきか、家族全員で一緒に引越すべきかは、家族の意向や状況に応じて決める必要があります。
例えば、以下のようなケースでは、単身赴任を選ぶことが多くあります。
- パートナーが今の仕事を続けたいと思っている
- 子どもが転校を嫌がっている
- 慣れ親しんだ土地や人間関係から離れたくない
- 祖父母の家が近い
一方で「子どものために家族一緒に暮らしたい」「新しい土地で心機一転したい」といった意向があれば、家族全員で引っ越すのもよいでしょう。
転勤の期間
転勤期間が数ヶ月といった短く設定されている場合は、単身赴任や持ち家を空き家として所有する方法がおすすめです。
貸出期間を短く設定すると、すぐに退去しなければならないため、借主が見つかりにくくなります。
一方、長期間かつ戻ってくる可能性が高い場合は、賃貸に出す方法も選択肢に入れやすくなります。
戻ってくる可能性が低いのであれば、売却することも視野に入れましょう。
転勤先の住宅補助や社宅の有無
転勤先の住宅補助が手厚かったり、社宅があったりする場合は、単身赴任を選んだときの費用負担を軽減できます。
持ち家がある社員に対して、転勤費用を補助する制度がある会社であれば、費用面を気にせず好きな方法を選びやすくなるでしょう。
転勤時の持ち家はライフプランに応じて適切に対処しよう
持ち家がある状況で転勤が決まったときの選択肢には、単身赴任を選んだり、持ち家を売却・賃貸に出したりする方法があります。
どの方法にもメリット・デメリットがあるため、家族の意向や状況、転勤の期間に応じて適切な手段を選ぶことが大切です。
それぞれの方法の注意点を知りたい人や、持ち家の対処法に悩んでいる人は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士